井戸端people

2022年05月20日

アレルギーで悩む方をサポートしたい!ながさき食物アレルギーの会ペンギン 代表 益子 美沙子さん

 

お子さんのマルチ食物アレルギー(様々な食物に反応するアレルギー)がきっかけで、食物アレルギーに関する団体を立ち上げた益子さんは、長崎市内の小中学校・高校・大学の家庭科講師でもあります。家庭科の先生が始めた「ながさき食物アレルギーの会ペンギン」の活動は、アレルギーがある方もない方も多くの方に知って欲しい取り組みです。

 

「子供が小さい頃は、いつどこでアレルギー症状が出るかもしれないという不安と、食物アレルギーに関する情報が少なく、悩みを共有できる人がいなくて孤独で辛かった」と当時を振り返る益子さん。「息子が無事に大きくなれたのは周りの皆さんに支えていただいたおかげです。その分これからは、私が恩返しをしていきたい。子供が大きくなるにつれ、アレルギーに対応する日々の負担も少しずつ減り、アレルギーを持つお子さんのお母さんのお手伝いがしたいと思うようになりました」と設立のきっかけを語ります。

 

「ながさき食物アレルギーの会ペンギン」は、食物アレルギー疾患の当事者及び関係者の生活上で生じる様々な問題や不安を共有できる場となることを目標として、長崎県内で活動をしています。教員、薬剤師、看護師、保育士、パティシエ、食品衛生責任者、食育指導士と様々な資格を有する役員の得意分野とご自身の経験を活かして、当事者や関係者へのサポートのほか、学生など幅広い方へアレルギーに関する情報の発信・共有を行っています。

 

井戸端パーティーには「食物アレルギー配慮寿司ケーキ作り&相談会」などを投稿し、長崎市でアレルギーに関心のある方々に向けて、貴重な交流の場を作っています。ぜひご覧ください。

 

 

Q.どのような活動をしていますか?

 

おしゃべり会の開催
食物アレルギーに関する悩み事を話したり、情報交換をしたりとおしゃべりする場です。アレルギーを持つ子の親は、日々の食事作りで大変な中、悩みを共有できる場が少なく不安を抱えている方が多い現状です。おしゃべり会に参加された方が「初めてこんなにたくさん話せました」と涙ながらに話されたこともあります。そんな方がほっとできる場、笑顔で帰っていただける場になると良いなと思い開催しています。

 

2022年6月18日には、LINEミーティングを使って「オンラインおしゃべり会」を開催予定です。食物アレルギー当事者、関係者、興味のある方のご参加をお待ちしています。

 

食物アレルギーに関わる入園入学に向けた準備講座や防災講座
入園入学の時は大きな節目で、お母さんたちも「どうしよう」と悩むことが多いので、この時期は、入園入学の準備に特化した講座を開催しています。内容は、親の目が届かない場所で食事をする機会が増えるということを強く認識していただき、お子さんの成長に応じたスモールステップをどのようにしていけば良いのかというアドバイスをしています。

 

預かる立場の方への講座
アレルギーを持つ児童を受け入れる側である保育・教育現場の方々に向けて、食物アレルギーに対する正しい理解と受け入れ体制づくりを支援するために、県内各地で開催される研修や勉強会で講演を行い、「食物アレルギーとは?」という基本的なことから、日々の対応や配慮点、誤食事故が起きた時の対応、事故を起こさないための工夫、おすすめレシピなどをお伝えしています。

 

参加者の皆さんからは、「もっとしっかりと食品表示をみないといけないと思いました」
「園ですぐに実践できることを教えてもらったのですぐにします」という声があがりました。

 

2022年7月7日には、長崎市の保育園の調理員さん向けの講演会を開催します。レシピ集紹介や日々の業務に役立つ内容をお話しする予定です。

 

サポートブックの紹介
学校では、預かる立場の先生とアレルギーを持つお子さん・お母さんとで面談をしますが、お子さんによって薬を飲むタイミングなど対応は一人ひとり違います。文字情報で学校も家庭もお互いが持っていた方がより安全ではないかということでサポートブックを作り、公開しています。

 

――預かる側もサポートブックがあれば、対応がわかりやすいですし、預ける側も安心ですね。

 

資料を作るのは、大変なのですが……。参加者からの「学校の先生に渡したら、凄く喜ばれました」という言葉が、嬉しくてやりがいを感じました。今は、アレルギーを持つ子も多いですし、アレルギーも多岐にわたっていて受け入れる保育園や学校などの負担を少しでも減らせたら良いなと思っています。

 

アレルギーがあるお子さんを持つ親御さんには、預かる立場の方々にわかりやすく伝えることができるように準備をしておくことをおすすめしています。やはり、正しい情報を伝えることが、お子さんの命を守るために必要です。その情報共有のツールであるサポートブックなど様々なデータを作成し、当会のホームページで無料提供しています。

 

日常生活に役立つ情報をSNSで発信
様々なアレルギー関連の本がある中で、わかりやすく参考になるものを選んで、紹介しています。他には、アレルギー対応食品の商品情報をSNSで発信しています。

 

――アレルギーについて一から探すとなると、情報が多すぎて大変ですよね。

 

そうですね。日々の食事作りだけでお母さんたちは忙しいと思うので、今までの経験で得た知識をお母さんたちに伝えていけたらなということもあって活動しています。

 

――アレルギー対応食品を知っていると知っていないとでは、食事の準備の負担が全然違いますね。十数年前は、アレルギー対応食品はあったんですか?

 

ほとんどありませんでした。今は、スーパーに行けば置いてありますよ!世の中、色々なものが出てきてありがたいです。

 

私は、家庭科の教員をしているのですが、アレルギー対応食品を生徒に紹介し、羊羹やクッキーを試食してもらいました。みんな「美味しい!」と言って食べていましたよ!

 

2019年の台風の時には、アレルギー対応食品を避難所に避難された方全員に支給した例もあるそうです。

 

――避難時の誤食を防ぐためにも、アレルギー対応食品の活用は、今後ますます必要になりますね。

 

料理教室

乳・乳製品、卵、小麦アレルギーがあると、一般に販売されているケーキを食べることが難しいので、寿司ケーキの料理教室を開催したんです!!

 

参加者には、「意外に簡単で、子どもと一緒に作ることもできて美味しかったです」と楽しんでいただけました。

 

Q.アレルギー対応で大変だったことはありますか?

 

一番悩んだことは、相談する人がいなかったことです。息子は、マルチ食物アレルギーだったので、毎日毎食、食事作りをするなかで、間違ってアレルゲンを食べさせてしまったら……というプレッシャーの中で暮らしていました

 

それと息子は、なかなか口をあけてくれない子だったので、その時息子がブームだったキャラクターのごはんを作って出していました。その他、半日かけて米粉のコッペパンを作ったりもしました。みんなと同じものを食べさせてあげたいという思いから、学校へ持っていくお弁当は、できるだけ給食に似せたお弁当を作っていました。例えば、卵焼きは、じゃがいもとカボチャで作ったりして。

 

他には、アレルギーがあると、旅行の際の食事に困ることが多いんです。アレルギー対応食品を持ち歩いたり、レストランに事前にアレルギー対応が可能か確認したりして、食事を中心にスケジュールを考えていました。

 

 

Q.長崎がどんなまちになって欲しいですか?

 

沖縄には、観光客向けのアレルギーサポートデスクがあるんです。同じく観光地である長崎市にも、アレルギーサポートデスクが出来たら嬉しいです。アレルギー情報の載ったご当地グルメの紹介やその他アレルギーに関するサポートがあることで、長崎に行ってみよう!長崎に安心して行けた!また行こう!と観光地としての魅力が上がるのかなと思います。旅行中の食事は、思い出の一つで、凄く大切ですよね。

 

――当事者の方にしか気づけないところですよね。

 

安心して行ける場所だと、また行こう!と思うんですよ。

 

 

Q.参加者の方は、どんな悩みを持った方が多いですか?

 

「何をどうしていいかわからない」「保育園や学校などにどこまでお願いしたらいいんだろう」「アレルギーについて話せる仲間がいない」といった悩みを持つ方が多いです。

 

また、根拠のない情報が世の中には溢れており、何が正しいのかわからず、適切な治療を受けられていないという実態もあります。科学的根拠に基づいた治療法がある程度確立されていることやアレルギー専門医による医療に繋げたいという思いから、当会では標準治療を掲げております。アレルギーの悩みを持つ方が、当会の活動に参加して、笑顔になって帰れる場を提供していきたいと思っています。

 

 

最後に
今回の取材を通して、アレルギーを持つ方が増えている実態や苦労されていることがわかりました。私たちもいつアレルギーを発症するかわかりません。アレルギーで悩んでいる方もそうでない方も、一人でも多く「ながさき食物アレルギーの会ペンギン」の活動を知っていただけると”安心して暮らせる長崎のまち”により近づけると思います。食物アレルギーの当事者や関係者が相談できる場、同じ境遇の仲間に出会える場として、「ながさき食物アレルギーの会ペンギン」の活動にぜひご参加ください。