井戸端people

2022年06月20日

子どもたちを守るために、小さい頃から性教育を 医師 岡田 恭子さん

長崎県内で麻酔科の医師として勤務する岡田さんは、月に1回「お母さんのための性教育本のオススメ会」を開催しています。岡田さんは、お子さんに小さい頃から性について教えることの大切さや伝え方のポイントなどを親御さんに伝えています。

 

性教育を「なんだか少し恥ずかしいこと」と思う方がまだまだ多いですが、正しい性教育は、自分や周りの人を大切にすることに繋がっています。お子さんを持つ親御さんはもちろん、性教育に抵抗がある方に知って欲しいと思うお話を聞かせていただきました。ぜひご覧ください。

 

 

Q.性教育って難しいテーマですよね?

 

そもそも私自身、性教育に抵抗があったんです。娘が小学4年生の時、学校で生理の話があって、家でサンプルと資料を「お母さん、はい!」と渡された時に「どう説明しよう……」となって、それからですね、真剣に勉強し、性教育の重要性が分かったんです

 

それと、病院で仕事をしていて、患者さんを診ていると、もう少し早く知識があればこうならなかったんじゃないかとか、一人で悩んでいるんだろうなとか思うことが結構あるんですよ。患者になる前にアプローチしなければと思ったことも活動を始めたきっかけの一つです。

 

 

Q.具体的にはどんな活動を?

 

「お母さんのための性教育本のオススメ会」を月に一回行っています。参加できなかった人向けに、YouTubeで限定配信も行っています。他に、インスタグラム、ブログでの情報発信や直接質問にお答えしています。

 

お母さんのための性教育本のオススメ会
約50冊の本からお子さんに合わせておすすめしたり、自由に手に取って読んでもらったりしています。他に、まとめた情報をスライドで説明したり、「お風呂はいつまで一緒に入っていい?」などみんなが困っていることをシェアしたりしています。息抜きやしゃべり場として気軽に参加してくれたら嬉しいです。

 

――子どもの年齢や個人によって理解できることが異なると思いますが、それをどう親御さん達に説明していますか?

 

性教育18年計画というものがあって、理解度に合わせて繰り返し、だんだん詳しく教えましょうという説明をしています。また、友達や先生を冷やかさないなどマナーも教えることも必要です。

 

――なぜ保護者向けに開催しているんですか?

 

子どもに性教育をしても、みんなの前では恥ずかしくて聞けないという子が多いと思うんですよ。子ども達が性に関する疑問を抱いた時にネットじゃないところで性教育に接する機会があればいいなと思っています。そうした理由で、まず大人が性教育をポジティブに受け止められるように親御さん向けに開いています。「性教育は、お母さんだけの問題じゃないですよね」と夫婦揃って参加される方もいます。

 

――イベントに参加された方の反応は?

 

「早速、本を買いました!」「恥ずかしがっているのは親だけで、子どもはすんなり受け入れてくれました」や「実は、性教育のことについて嫌だなって思っていたんですが、タブーが無いってこんなにも楽なんだ!と実感しました」という感想が嬉しかったです。

 

また、参加した大学生に「子どもの頃、親に相談できましたか?」と聞くと、「親にだけは相談できませんでした」という返事がよく返ってきます。親が「うちは親子仲いいから大丈夫」と思っていても、子どもは心配をかけたくないと相談できないこともあります。だからこそ、大学生など若い人達に「小さい頃に知りたかった」と言われることも私の活動の原動力になっています。私自身この活動をすることが楽しいんです。この活動で出会った元気な方たちからエネルギーをもらって、本業の医師も頑張っています。

 

 

Q.性教育の現状を教えてください。

 

性教育への抵抗
2年間この活動を続けてきて、実際に来る人はお知らせした人の2割くらいです。性教育についてまだこんなにたくさんの人が抵抗を持っているんだと感じています。ですので、なるべく生々しい話はせずに、“性教育は、個性を認め合って自分や相手を大切にするために必要なことで、それがいじめやDVの予防にもなる”ということをこの活動を通して伝えています。

 

性被害
子どもが、男女の身体の違いなど性にまつわる素朴な疑問を抱いた時に、大人が「はしたない」「そんなこと知らなくていい」などとシャットアウトしたり濁したりしてしまう。親に聞けなかった子どもが、インターネットやSNSで性の相談をし、身体の写真をアップロードする被害がとても増えているんです。最近は、自分の写真を躊躇なくSNSに掲載する子が多いです。顔を隠していても体操服やその友達から個人情報を特定されることも。ネットリテラシーを教えることも大事だなと思うようになりました。

 

また、子ども自身がわいせつ行為や児童虐待の事実があることを知らないと自分自身を守れないと勉強しているうちに気付きました。頭ごなしに「ダメ!」と言ったら子どもが聞きたいこと、悩んでいることを隠してしまうけど、こんな犯罪があってこういうことをすると危ないよと教えてあげると自分で止めるので、情報をシャットダウンするのではなく、情報を渡して選別する力を大人も一緒につけることが大事なのかなって思っています。

 

日本の性教育の遅れ
中学生からお付き合いをする子もいるなか、日本の性教育が遅れていることで、悲しむ子ども達がいるということが現実です。知識が無いことで自分や誰かを傷つける結果にならないように、小さい頃から性教育の正しい知識を身に付けて欲しいです。好奇心や周りへの見栄で付き合う子もいて、「え、まだなの?」と言われると不安になってしまう。そうじゃなくて、大事だからこそ初めての経験を取っておきたいよねって言えるような環境が当たり前になると良いなと思います。

 

――小さい頃から性教育に触れる機会があれば、自分の心や身体の事で悩むことがあっても誰かに相談して良いんだなって思えますよね。

 

親の中にも性教育ができる人とそうでない人がいるので、親が全部教えないといけないということはないんです。実際に、自分の子どもに避妊具の使い方を言える親はほとんどいないと思うんですよ。

 

直接、親が説明できなくても、性に関する本を子どもの目に付く場所に置いておくだけでも良いのかなと思います。

 

 

 

 

Q.活動を通じてみなさんに伝えたいことは何でしょう?

 

小さい頃から「NO」と断る練習を
小さい頃から性的同意の経験をさせることが大切です。「NO!」というと雰囲気を壊すから言えなかったことがあるという人も多いと思います。「嫌だ」と思うことは当然で伝えていいことなんです。

 

また性的同意では、断られたことを受け入れるということも必要です。小さい頃から親子間で「○○君、ハグしていい?」「ママ、ハグしていい?」と聞き合って、断られても受け入れるという経験をさせておくことが大切なんだと思います。

 

子どもの成長を褒めてください
子どもが小さい頃から「恥ずかしいことだよ」「汚いことだよ」と言わず、「大事なものだから隠してね」という言葉で言ってあげましょう。思春期の身体の変化を冷やかさないでください。そうしないと親の言葉や社会に溢れている偏った情報による刷り込みによって、思春期に自分の身体の変化を「嫌だな」と思ってしまうんです。子どもの成長を「大人になりよったい!!良かったね!」と言ってあげて欲しいですね。

 

 

 

Q.今後挑戦してみたいことはありますか?

性教育に関する親子参加型のクイズラリーや“まちなか図書館”を開いて、第三の居場所を作れたら良いなと思いますね。性教育本って本屋にも図書館にもなかなか置いていないんですよ。まちなか図書館で色んな方のおすすめの本を置いて、気軽に集まれるたまり場があるといいなと思います。

 

 

最後に

 

岡田さんのオンラインイベントに参加した際、同世代のお母さんたちと“性”について子どもにどう伝えるかを率直に話すことができたり、数字に裏付けられた資料を基に性被害の実態を聞いたり、とても貴重な時間を過ごすことができました。子どもから大人まで“性”について気軽に語り合い、正しい知識を身に着ける機会が増えたら良いなと思います。

 

ぜひ井戸端パーティーで岡田さんのイベントをチェックしてみてください。