井戸端people

2023年08月24日

思い入れのある服を、“今“必要なかたのもとへ Fuku+(フクプラス) コネラン友美さん

今回の井戸端peopleは、誰でも服の交換ができるブースをマルシェなどに出店しているコネラン友美(ゆみ)さん。
誰かが着なくなった服を、必要としている誰かに届ける架け橋になりたいという思いで活動しています。
ブースには活動を応援する方々から寄せられた服が並びます。服を持ち込むかたは1 着当たり手数料1 0 0 円を支払い、当日か後日に同じ数の服と交換できます。持ち込む服がなくても手頃な価格で購入できます。並ぶ服はコネランさんが丁寧に洗濯や補修をしているので安心です。
活動を始めて半年間で交換された服は300着以上。活動を通じて、持ち込むかた同士の交流も生まれています。コネランさんは「服を買う機会が少ないかたに利用してもらい、もっと服を楽しんでほしい」と言います。
Fuku+は、ほぼ毎週さまざまなイベントやマルシェに出店しています。誰かに着て欲しい服を持って、出掛けてみませんか?思わぬ1着と交換できるかもしれませんよ。

 

Q.活動の様子を教えてください
私の活動は、使われずに眠っている服を、今必要なかたに届けるためのお相手探しだと思っています。
半年前にこの活動を始めて、すでに300着以上が交換されて新しいかたのもとへ渡りました。扱う服の数も最初は自分の子どもが着られなくなった服と、知り合いのかたからいただいた200着でしたが、チラシやSNSで活動を知ったかたや知り合いのかたが広めてくださって、今ではベビー服からシニア向けまで750着ほどになっています。長崎市とその周辺地域だけで、自分の服を誰かに使ってほしいというかたがこれだけいらっしゃることが分かったことは、活動をしていくうえですごく励みになります。
服を持ってこられるかたからは1着につき100円をいただき、服は外干し後、洗濯し、痛んでいる部分やほつれ、ボタンが外れそうなものは補修をしてから交換用の服としてお出ししています。その場に気に入った服がなければ、スタンプカードをお渡しして後日交換することも可能ですし、持ち込める服がないかたは300円とか500円とか手頃な価格で購入いただけるようにしています。そうして不要になった服が地域のなかでどんどん循環していけばいいなと思っています。
活動のモデルは、夫の故郷のイギリスで目にしたチャリティーショップです。イギリスではチャリティーが盛んで、寄付で集まった服や家具を販売して、集まったお金が慈善団体などへの寄付金として使われていて、すごくよい活動だなって思っていました。Fuku+もチャリティーショップのような存在を目指しています。

──どんな場所で出店していますか?
長崎市とその周辺地域のイベントやマルシェにほぼ毎週出店しています。長崎市役所前の魚の町公園で行われるマルシェ、長崎ねこの会さんが現川でされている保護猫譲渡会×マルシェ、長崎ペンギン水族館のイベントなど、私の活動に共感してくださるイベントの主催者さんたちに出会えたことで、市内のいろいろな地域のかたに来ていただけるようになりました。
引っ越しや物を整理する時など、行きたいタイミングで持ち込んでいただけるように、週に1回は自宅の一室を開放して服の交換が行えるようにもしています。

 

Q.利用されるみなさんの反応はいかがですか?
服を見にたまたま出店ブースに来られて「何でこんなに安いの?」というところから興味をもっていただくことが多いので、丁寧にわかりやすく活動の内容をお伝えするようにしています。
「次は服を持ってきます」「こんな活動、今までなかったですね!」と、応援してくださる声をいただくことが、やっぱり一番うれしくて、そういうかたに一日に1人でも出会えるだけでやっていてよかったなと思います。
服を持ってこられたかた同士が相手の服を気に入ってその場で交換されたり、持ち込まれたその日のうちに新しいもらい手が見つかったりする服もありました。「子どもがこういう時に着ていたんですよ」「大事に使わせてもらいますね」って持ち込まれたかた同士の会話が聞けて私もうれしかったです。

 

Q.介護の現場で目にした現状
──訪問介護の仕事を長年されてきたことが、活動をはじめたきっかけだとか。
私は20年間、訪問介護の仕事をしてきました。お客様の家に伺って仕事をするなかで、経済的理由などで着られる服が少なくて洗濯したらすぐに着てもらわなければいけないかたもいれば、お金はあっても家族の服があるからと買わないかたも多くおられました。デイサービスやお出かけに一緒に行く際に、サイズが合わない服を着てらっしゃって、「買いましょう」って言っても買おうとされないんですね。服はあるのにサイズが違ったり着ることができなかったりする状況が、私のなかではとても悔しい経験として残りました。
ご家族の服や思い入れがある服をどうしても手放せず、片付けきれなくなってしまう気持ちもすごくよくわかります。でもそんな服が必要なかたの役に立って、しかも自分に合った服と交換ができるとしたら、使わない服を手放してもらえるのではと考えたのがきっかけです。
今、10着以上不要な服があればご自宅に取りに行きますとお声がけをしていて、時には服を一緒にお片づけして、服の思い出話を聞かせてもらうこともあります。そんな時は、「一着一着丁寧に預かりますね」ってお伝えして持ち帰っています。

 

Q.子育ての経験からわかったこと
──子育て中のお母さん世代もよく利用されるそうですね。
私自身も子育て中で、子どもはどんどん成長して毎シーズンごとに服を買っているのに、学校の費用だったり習い事だったり、子どものことを優先してお母さんたち自身が服を楽しむ余裕がないかたが多いと感じました。Fuku +では、ベビー服のような小さなものであっても1着として扱うので、大人のワンピース1着と交換することができます。実際、お子さんが着られなくなった服を持ってきて自分の服を選んで帰られるお母さんが結構おられますね。
「子どもの服が小さくなっちゃった。また買わなきゃいけない…」ではなくて、「これでまた交換にいける!」っていう風に考えてもらったら、子どもの成長を心から喜べて、また自分の服や子どもの大きいサイズの服に交換ができるっていう楽しみに変わると思うんですよね。
洋服交換にでている服を活用してもらったら、環境にもお財布にもやさしいっていうことももちろんあります。でもそれ以上に、お母さんたちには自分が持っていなかったような服や、そのかたにとって100円以上の価値を感じられる服を探す、「宝探し」のような気持ちで楽しみに足を運んでいただければいいなと思っています。

 

Q.アイデアを行動へ、一歩踏み出すまで
──地域をよくするためのアイデアはあっても、なかなか実行に移せないかたも多いですよね。
子どもが小学校に上がるのを機に、正社員として働いていた訪問介護の仕事を辞めて主婦になりました。子どもが学校に行っている間、いろいろ考える時間ができた時に、以前から温めていた洋服交換所のアイデアを実現するのは今なんじゃないかと思ったんです。
まず私がやったことは、長崎商工会館にある無料の経営相談窓口、長崎県よろず支援拠点に相談に行くことでした。そこで自分とは違う視点でアドバイスをもらいながら、やりたいことを形にできたことが、私にとってとても大きかったです。
Fuku+の名刺にある「過去形じゃなくて、現在進行形のUSEDを。」も、よろず支援拠点のデザイナーさんが提案してくれた言葉で、私の想いにピッタリの言葉でした。リサイクルだったり、人に譲るっていう行為だったり、過去から続いているやりかたでは、ちょっと好みやサイズが違うと使われずに眠らせてしまうことが多いんですよね。私もそうでした。そうではなくて、必要なかたに必要なものが回っていくことが未来に続く活動なんじゃないかって。こうして私の活動の軸が定まったんです。

 

Q.活動に対する想い
──これから挑戦したいことはありますか?
Fuku+の「+(プラス)」には、いろいろなことに挑戦していきたいという想いを込めています。
介護の仕事と子育てを経験したこともあって、高齢者施設や児童施設で無料の服屋さんを開いて服を買いに行けないかたたちにお渡しするような活動もやってみたいです。それと、子どもが教える側になったり、お店を開いたり、子どもたちの才能を応援するようなイベントも考えています。そこに自宅で過ごすことが多い高齢者のかたたちにも参加してもらえたら出かける機会にもなりますし、子どもたちにとっても学ぶことがたくさんあると思うんですよね。

 

──活動を通じて伝えたいことは?
海外の貧しい国々に服を送るボランティア活動がある一方で、私は訪問介護の仕事を通して身近なところで着られる服がないかたたちをたくさん見てきました。隣に住んでいるかたが困っているかもしれないし、隣町のかたが困っているかもしれないし、みなさんの家に眠っている服を必要としている誰かがきっといると思うので、私はその「架け橋」になれたらうれしいです。長崎を、長崎のみんなで助け合える、そんな循環型社会がいつか実現したらいいですね。

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Fuku +のInstagram:
https://www.instagram.com/fuku_plus/

 

〈こぼれ話〉──活動で苦労されていることは?
古着を扱うためには「古物商許可」が必要で、私もこの活動のために取得しました。しかもハンドメイド雑貨のお店などとは違ってマルシェやイベントに出店するにも、毎回仮店舗の届け出を所轄の警察署に出さなくてはいけません。そのために毎月警察署に行っているので、最近は署員のかたとも顔見知りになって、「次はどちらですか?」って聞かれるようになりましたね(笑)