井戸端people

2024年01月24日

長崎と世界をつなぐ窓口に JICAデスク長崎 国際協力推進員 小田智子さん

今回の井戸端peopleは小田智子さん。出前講座やパネル展の企画など、国際協力を身近に感じてもらう活動を行っています。
小田さんは「自分の視野を広げたい」と、海外協力隊に参加し、音楽教師として2年間パラグアイで活動。異国の地で暮らした経験から、「互いの違いを認め合い、理解すること」が大事だと気づいたそう。国際協力推進員として行っている出前講座では、協力隊での経験談や国際理解のワークショップを通して、世界に興味を持ってもらうことを大切にしているそうです。
日頃は、途上国での国際協力や協力隊に関する相談にものっています。「いろんな人たちと関わり、つながりを作るのが大好き。これからも長崎と世界をつなぐお手伝いをしたい」と語ります。出島交流会館内にあるオフィスで、JICAデスク長崎の国際協力推進員を1人で担当している小田さんに、活動への思いをお聞きしました。

 

Q.国際協力に関わる仕事についたきっかけ
──現在の活動をするに至った経緯について教えてください。
元々、国際協力に興味があったわけではないんです。ただ、海外旅行好きの祖父から海外の話を聞いたり、子どものころにもらった誕生日プレゼントが地球儀だったりして、子どもながらに「海外っていいな」って思うようになりました。それから大人になって、クラリネットを教える仕事をしたり、自分で演奏したりしていたんですが、一緒に演奏活動をしていた人が海外協力隊に参加したんです。その人が日本に戻ってきて再会したときにすごくいい顔をしてたんですよ。表情も明るくなっていて、話すと視野も広がっているように感じました。ちょうど  私も「視野をもっと広げたい」とか「自分をもっと変えてみたい」という気持ちがあったので、思い切って協力隊に応募しました。
──そこからパラグアイに行かれたんですか?
そうです。音楽教師として2年間過ごしました。エンカルナシオンっていう市があって、そこで子どもも大人も通えるような習い事の先生として配属されていました。ホームステイをしていたんですが、ホームステイ先のご家族がすごく優しかったんです。パラグアイって家族の結びつきが強いんですけど、そのご家族の一員として受け入れてもらえた気がして、充実した2年間を過ごすことができました。

 

Q.パラグアイでの生活で気づいたことについて
価値観や考え方の違いを感じました。パラグアイの人は困難に直面したときに、仕方がないとあきらめて、切り替えるのが早いなって思うことがあって。必ずしもパラグアイの人全員がそうではないと思いますが、「もう少し頑張ってみたらいいのに」と思うことが何度かありました。考え方の違いからストレスを感じてしまうことがあって、なんでそういう考え方をするのかなって考えたときに、そこには政治や歴史、教育などの背景が関わっているのかなって思ったんです。日本人もきっとそうで、日本人は礼儀正しいとよく言われますけど、これまでの歴史や受けてきた教育が背景にあるんだと思います。それから相手のことをできるだけ理解するように心がけました。私がパラグアイの人と同じ考え方をするのって難しいんですけど、分かり合おうとすることはできるなって。それぞれ価値観が違うのは当たり前で、様々な背景があるんだって分かったうえで接したら、どんどんコミュニケーションがうまくいくようになりました。自然と相手も私のことを理解してくれるようになって、ストレスも感じなくなっていったんです。
それと同じことが、日本や長崎で暮らしている外国人に対してもできるんじゃないかって思うんです。国際協力って聞くと、途上国での支援のような国外に向けたものをイメージされがちですが、実は国内での国際協力がとても重要なんです。長崎市にも約4,000人の外国人の方が暮らしているので、現在は長崎でできる国際協力に目を向けて活動しています。

 

Q.JICAデスク長崎としての活動について
──現在は主にどのような活動を行っていますか?
パラグアイから帰国して、数年後にJICAデスク長崎の国際協力推進員に着任しました。国際協力推進員として、出前講座やパネル展を開いたり、途上国での国際協力や海外協力隊に関する相談に乗ったりしています。

──出前講座ではどのようなことをお話しているんですか?
出前講座では協力隊での経験や多文化理解について話したり、ワークショップを実施したりしています。学校に行くことが多いですけど、高齢者向けに講座を行うこともあります。「世界がもし100人の村だったら」というワークショップをやることがあるんですけど、学生さんを全世界の人口に見立てることで、人口分布や言語の違いの比率を体感することができるんです。「実際に視覚化することで理解が深まる」と学生さんからも好評です。国際協力って範囲が広いので、すぐ成果が見えたりするものではないんですけど、講座をやってると、世界や国際協力に興味を持ってもらえたって分かる瞬間があるんです。「海外への興味がわいた」とか「新たな気づきがあった」と言ってもらえたとき、「今、この人に世界へのアンテナが立ってる!」って感じられてすごく嬉しいです。講座を受けた人にとって、国際協力が今後の選択肢のひとつになってくれたらいいなと思ってお話しさせてもらっています。

 

Q.長崎市に暮らす私たちが国際協力のためにできること
日本に住む外国人は、言葉の難しさに苦労されていると思います。ひらがなだけならいいんですけど、カタカナや漢字があるので、日本語は特に難しいみたいです。例えば「9時に開館します。17時に閉館します。」とかよく書かれてるじゃないですか。そういう表現だと外国人の方にはうまく伝わらなくて、「ごぜん9じから あいています。ごご5じに しまります。」という風に「やさしい日本語」に言い換える必要があるんです。意外に思われるかもしれませんが、日本にいる外国人と私たちとの共通語って、「やさしい日本語」なんです。無理に英語を話そうとするのではなくて、「やさしい日本語」を使う意識を持つことが大切なんだと思います。
あとは文化や宗教についても理解する必要がありますよね。食べられないものがあったり、お祈りをする場所が必要だったりするので。外国人と共に暮らす中で、「やさしい日本語」を使ったコミュニケーションに努めたり、文化や宗教について私たち一人ひとりが学ぶことで、「外国人にやさしい長崎市」につながっていくんだと思います。せっかく長崎に来てくれたんだから、長崎をもっと楽しんで、好きになって帰ってほしいんです。JICAデスク長崎で行っている活動もそのきっかけになるといいなと思っています。地道な活動だとは思うんですけど、これからも取り組んでいきたいですね。

 

Q.活動を通じての思い
いろんな人と関わり合う中で、その人たちのこれからの未来について想像するのが楽しいですね。出前講座でお話するときも「あの時、あんな話してくれたな」っていつか思い出してほしいなと思いながらお話しています。あとはつながりを作るのが好きです。例えば、企業さんから話を聞いて、協力し合えそうな別の団体さんを紹介したりして、その輪がどんどん広がっていくのがすごく楽しいです。私は自分のことを「長崎と世界をつなぐ窓口」だと思っているんです。長崎と世界をつなぐ中で、企業さんや団体さん、学生さんをどんどんつなげていく。つながりの輪が広がることで、より新しいものや楽しいものが生み出せる気して。そこが私のモチベーションになっています。
──みなさんへのメッセージをお願いします。
「国際協力」ってすごく堅いものというか、遠い存在だって考えられてるところがあって。実際、JICAデスク長崎も、「ハードルが高くて尋ねにくいものだと思っていた」っていう声をいただいたりするんですよね。でもそんなことはまったくないんです。皆さんにとって身近な存在だと思っているので、どんなことでも構わないので、気軽に尋ねてきてほしいですね。国際協力に関するいろんな話とか、相手と分かりあうためにはどうしたらいいのかとか。一緒に考えながら何かできたらいいなと思うので。まとめると、いつでも遊びに来てくださいってことです!(笑)世界のことについてなんでもお話ししましょう!

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