2025年11月26日
自然と人をつなぎ、地球を大切にする心を育む 長崎県シェアリングネイチャー協会 理事長 奥村公子さん
ながさき井戸端パーティーを活用しているかたをご紹介する「井戸端people」。今回は、五感を使って自然を感じるネイチャーゲームを通して、自然との触れ合いや環境について学ぶきっかけをつくっている「長崎県シェアリングネイチャー協会」理事長の奥村公子さんにお話を伺いました。

―シェアリングネイチャーについて教えてください。
シェアリングネイチャーとは、自然を体感し、親しみ、その感覚や感動を分かち合う活動です。1979年にアメリカのナチュラリスト、ジョセフ・コーネル氏によって提唱されました。日本では公益社団法人 日本シェアリングネイチャー協会のもとに各都道府県協会があり、長崎県内には、「ながさきしシェアリングネイチャーの会」、「多良・雲仙シェアリングネイチャーの会」、「西海シェアリングネイチャーの会」の3つの地域の会があります。
五感を使って自然と触れ合う「ネイチャーゲーム」を通して、身近な自然に気づき、自然と人とのつながりを再発見することを目的としています。対象は子どもから大人まで幅広く、楽しみながら自然の魅力に触れられるゲームが170種類以上あります。日本シェアリングネイチャー協会の認定資格を持つ指導員が、参加者の年齢や目的、開催場所などに合わせてネイチャーゲームを組み合わせてプログラムを作成し、体験の場を提供しています。

―具体的にはどんなネイチャーゲームがありますか?
例えば「フィールドビンゴ」は、キラキラしたもの(視覚)、鳥の声(聴覚)、いい匂いのもの(嗅覚)ふわふわしたもの(触覚)など、カードに書かれたものを自然の中から探すゲームです。視覚だけに頼らず、「この葉っぱはどんな匂いだろう?」「どんな触り心地かな?」と、普段あまり意識しない感覚を使って自然に向き合うことで、新たな発見があります。グループのみんなが「これが‶いい匂いのもの″だね」などと納得したらそれでOKになるという大切なルールもあります。
また「サウンドマップ」は、周囲の音に耳を澄ませ、聞こえた音を自分なりの記号や模様で地図のようにカードへ描くゲームです。できあがった「音の地図」を見せ合いながら、「さっきの鳥の声、私はこう描いたよ」などと共有すると、感じ方の違いにも気づくことができます。カードには日時と場所を記入する欄があり、この日・この時間・この場所の音の地図となるため、同じ場所でも時間帯や季節が変われば聞こえる音も変わり、全く違う地図が生まれます。一期一会の自然との出会い、その場に居合わせた仲間たちとの感覚の共有の時間は特別なものです。
どちらのゲームにも正解、不正解はなく、自然そのものに向き合い、その感覚や気づきを分かち合うことを大切にしています。

―奥村さんがネイチャーゲームに出会ったきっかけを教えてください。
当時4歳と2歳の子どもたちの遊び場を探して市内を車で走っていた時に、「長崎市民の森」の看板が目に留まり、ふと立ち寄ってみたんです。そこで偶然、ネイチャーゲームリーダー養成講座のチラシを見つけ、ピンときて受講したことがきっかけです。2012年10月に指導員資格を取得しました。
資格を取得してからは、人生が変わりました。ネイチャーゲームの活動をきっかけに、親子向けに森や畑、田んぼでの自然遊びを行う団体を立ち上げて活動したり、ながさきしシェアリングネイチャーの会が参加している長崎市の地球温暖化対策の市民ネットワーク「ながさきエコネット」で「ながさきエコライフ・フェスタ」などの環境イベント開催の実行委員会にも関わったりしてきました。また、長崎市・長崎県の地球温暖化防止推進員や長崎県環境アドバイザー、長崎県木育講師フォレストマスターとして、環境や森林、SDGsに関する出前講座の依頼を受けるようになり、環境や森林分野の活動にも携わるようになりました。

―出前講座の中ではどんなことを心がけていますか。
一つ目は「一人ひとりの気づきが大きな力になる」ということを実感してもらうことです。地球温暖化防止やSDGsといった難しく感じられるテーマを、クイズを取り入れながら楽しく分かりやすい形で伝えるようにしています。身近な自然の美しさや面白さに気づくことで、自然への親しみや愛着が生まれ、「大切に守っていきたい」という思いが育ちます。その気持ちこそが環境への関心につながり、活動への大きな力を与えると考えています。例えば「自分たちの地域のこの自然が好きで、ここを守りたいから清掃活動に取り組もう」という思いが根底にあると、活動に深みが出て継続の力にもなると考えています。
二つ目は「知って、気づくことが行動を変える」ということを伝えることです。例えば筆箱を処分する場合、附属品が多く複雑な構造のものは分解ができず、結果として「燃やせないごみ」に出してしまうことになります。ごみのリサイクルについて知識を持ったうえで、購入時から処分時の分別のことまで具体的に考えることが、商品を選ぶ時の行動の変化につながるということを話しています。

―今年は、新たな団体である「自然環境ネットながさき」を立ち上げたと伺いました。
これまでネイチャーゲームや環境教育の活動を通じて、多くの人や団体、行政と関わる機会がありました。そうしたつながりの中で、「自然と地域の暮らしをつなぎ、人と人、地域と団体・行政をつなぐ活動ができたら」という思いが強くなり、「自然環境ネットながさき」を立ち上げました。
自然体験や環境教育などを通じて、自然との共生や資源の循環を促し、多様な主体と連携して地域課題の解決に取り組むことができる団体を目指しています。
―最後に、メッセージをお願いします。
ネイチャーゲームのように五感で自然を感じる体験も、環境や暮らしについて考える学びの場も、「自然と人、人と人とがつながるきっかけ」になります。特別な場所に行かなくても、身近な地域の自然や日々の暮らしの中には、小さな「気づき」がたくさんあります。その気づきが、地球を大切にしたいという思いの芽になり、行動を変える第一歩になるはずです。これからも、自然を真ん中に、人や地域がよりよくつながっていく場をつくっていきたいと思います。
1月11日(日)、1月12日(月・祝)には、「ネイチャーゲームリーダー養成講座 長崎会場」を開催します。興味のある方はぜひ参加してみてください。

日本シェアリングネイチャー協会
【ホームページ】
自然環境ネットながさき
【Instagram】
https://www.instagram.com/shizenkankyounet_nagasaki/
【公式LINE】
https://line.me/R/ti/p/@093ybzpd
1月24日(土)に奥村さんを講師として、ながさき井戸端パーティー野外イベント「五感を使って自然を感じようin日吉自然の家」を開催します。澄んだ冬の空気の中、日吉自然の家というフィールドに合わせて奥村さんが組んだプログラムで、ネイチャーゲームを楽しみましょう。親子での参加をお待ちしています!
【詳しくはこちらから】
【問い合わせ】
長崎市中央地域センター
TEL:095-829-1418
FAX:095-829-1281





